大 腸 と は
 大腸とは、右下腹部の小腸終末部から、肛門に至るまでの約1.5mの管腔の臓器です。肛門に近い約15cmを「直腸」、それ以外の部位を「結腸」と呼びます。

 小腸から結腸に入ると、やや下方に膨らんだ「盲腸」があり、ここに鉛筆よりやや細い7〜8cmの「虫垂」がぶら下がっています。右下腹部の盲腸から右上腹部までの結腸は上に行くので「上行結腸」、右上腹部から左上腹部までは、横に行くので、「横行結腸」、同様に左上腹部から左下腹部に至る部位を「下行結腸」と呼び、ここから、直腸に至るまでの部位は、S字状に屈曲しているため「S状結腸」と呼ばれています。そして「直腸」「肛門」になります。
 その主な働きは、小腸から流れてきた内容物(下痢状の便)の水分を吸収し、固形の便にすることです。大腸癌とは、この管腔の粘膜面に発生した悪性腫瘍です。

 これが一般的な大腸の模式図ですが、実は大きく異なる点があります。一つは横行結腸です。図では緩やかなカーブを描いてますが、実際はもっと長く、下腹部まで進展して、「U」字に伸びています。そして最も違うのがS状結腸です。こんなに短くシンプルではなく、もっともっと長く、前後左右に重なり合い、場合によっては、どう繋がっているのかわからないくらい「ごちゃごちゃ」しています。

@大腸よりも上(口側)にある小腸には、中学校の理科で出てきた、「絨毛」という、絨毯のような組織が並んでいます。これによって、栄養の吸収などを行っています。全体を広げると、その面積はテニスコート一面分とも言われています。小腸は病気は非常に少なく、また7〜8mと長いため、全ての小腸をくまなく検査する有効な手段は現在のところありません。カプセル内視鏡もありますが、精度、費用、診断能力の問題もあり、まだ満足のいくレベルには到達していません。
A小腸と大腸の境界にはバウヒン弁という逆流防止弁があります。左側面に噴火口のように膨らんだ部位が弁です。その中心に、穴があり、ここに入ると小腸になります。つまり、肛門から内視鏡を挿入し、その像が見えると、大腸の最も奥(盲腸)に到達したという目安になります。盲腸の奥には、虫垂の入口部が見えます。虫垂の内腔は非常に狭く、内視鏡は通常挿入できません。私の経験上ですが、稀に(1万人に一人くらい)太い虫垂の方がいて、内視鏡が挿入できる人もいました。
B上行結腸は、わりと広く、ヒダも大きく深いのが特徴です。このため、小さなポリープなどが隠れる可能性があります。がんの発生する頻度は大腸全体の1割程度です。ここを流れる内容物は、いわゆる「液状」のため、腫瘍がかなり大きくならないと、通過障害による腹痛などの症状を呈することはありません。中には、「この辺(お臍の右側)に固いしこりがある」という症状で見つかる事もあります。ですので、初めて発見された時には、かなりの大きさになっている事もあります。
C上行結腸と横行結腸の曲がり角のすぐ上には肝臓が存在し、通常我々は「肝曲」と呼びます。大腸から見ると、肝臓が透けて見えるのが分かります(色がやや青くなっている部位)。ここに限らず、大腸にはいわゆる「急カーブ」が数箇所にあり、このような部位は、内視鏡検査において死角になりやすい部位です。
D横行結腸の長さには個人差があり、非常に長いと「U」字型にたるみ、下腹部(膀胱付近)まで伸びる方もいます。ヒダは、やや三角形のような形をしているのも特徴です。この部位のがんの発生頻度も、そう高いものではなく、全体の約1割弱です。
E横行結腸と下行結腸の曲がり角のすぐ上には脾臓が存在し、「脾曲」と呼びます。やはり青く透けて見えるのが分かります。肛門からまっすぐに(S状結腸がたわまない状態で)内視鏡がここまで届くと、約50cmになります。
F下行結腸になると、ヒダは浅く、内腔はやや細くなってきます。このあたりから、便はわりと固形になってくるために、腫瘍などによって通過できる空間が狭くなってくると、症状が出やすくなります。この部位は横行結腸よりも、少しがんの発生頻度が高くなってきます。また、腹部の左側の壁に固定されているのが普通ですが、たまにその固定がゆるく、体の正中(真ん中)まで移動してしまう人もいます。それ自体は、なんら支障はないのですが、内視鏡の挿入難易度がやや増します(女性にやや多い傾向にあります)。
GS状結腸は複雑にカーブをしており、最も挿入に難渋する部位です(初心者の医師を一番悩ませる部位でもあります)。この部位は個人差が激しく、長さが極端に変わります。特に便秘がちな女性や、割腹のいい男性などでは、お腹全体に大きく伸びる方もいます。また、「憩室」といって小さなポケットのようなクボミが多発する場合があり、そうなると、内腔が極端に細くなり、太い便が出なくなります。この部位から極端にがんの発生頻度は高くなり、全体の3〜4割が発生します。
H直腸はいわゆる便をためる袋です。容積が大きく、いわゆる「広い空間」になります。約15cmという短い部位ですが、S状結腸と同様に、極めてがんの発生頻度の高い部位です。その病変が、直腸の上の方に発生したのと、下の方とでは、大きく術式が異なり、特に肛門に近い直腸(肛門から指を半分しか挿入していないのに、触れるような場所)にがんが発生すると、その術式は、永久的な人工肛門になる可能性がでてきます。
I直腸内で内視鏡を「?」マークのように反転させると、直腸内から肛門への出口を観察することができます。黒いのは内視鏡本体で、肛門から入ってきている様子がわかります。もし、この内視鏡の根本に腫瘍が接触するような形で腫瘍が存在すれば、人工肛門の可能性は極めて高くなります。また、おおきな痔核や、肛門ポリープなどは、この像で直腸内に入った痔核やポリープを確認することができます。

 大腸はこのような構造をしています。内視鏡検査は、肛門からカメラを挿入し、まず盲腸まで挿入し、その帰りに大腸全体を観察してくる検査です。粘膜を直接観察でき、放射線の被爆もなく、病変の組織を直接採取できる、唯一の最も確実な大腸の精密検査です。

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