大腸の病変を実際に見てみましょう

 内視鏡検査でできることは、ポリープや腫瘍、大腸炎や、炎症性疾患などの病気の発見、細胞の採取(生検=確定診断)、内視鏡的切除が可能かの判断、手術の必要性の判断、そして、ポリープ、病変の切除、つまり治療です。ポリープには様々な形、大きさがあります。その一部を紹介します。これらの大きさ、形、形状であれば、内視鏡的治療を行っている医療機関では日常的に治療をしていますので、切除が可能です。 


 ポリープの切除は一般的には根元の部位に生理食塩水や、ヒアルロン酸などを含んだ液体に、血管収縮剤を混ぜたものや、青色の色素などを混ぜたものを粘膜下に注入してポリープを浮き上がげてから、電気メスの輪をかけて通電して切除(EMR)が行われたりするのが一般的です。

 形状にもよりますが、キノコのような茎(くき)のあるようなポリープは、通電して切除した後に、出血予防目的にクリップをすることもあります。また、下の写真のように、先にクリップを先にかけて、その後ポリープを切断するケースもあります(医師の判断)。

 どの切除の仕方にしても、切り取った後には、粘膜の欠損した部位が生じますので、ここからの後の出血の可能性を減少させる目的に、クリップでその粘膜の穴をふさぎます。このクリップは、後日自然に脱落し、便と一緒に出てきます。

 切除した時点では出血が無くても、数日後に出血する可能性があるので、通常は入院が勧められますが、入院施設がない医療機関では、もちろん入院もできませんので、その日のうちに帰宅することになります。

 実際、入院しない形態を希望する患者様が多いので、そのような要望に応えるように入院せずにポリープを切除している医療機関も決して珍しくありませんが、夜中の急な出血などが生じる事もありますので、そのような場合に遭遇した時の対処方法など、綿密に聞いておく必要がありますし、そのような状況になった場合の対処の仕方を医療機関側もしっかりと説明する必要があります。患者様も、そのようなリスクを背負って帰宅するという事をしっかりと認識しないといけません。


 ポリープを切除したあとは回収して、検体を顕微鏡の検査に提出し、良性・悪性の判断をしてもらいます(クリニックなどでは、結果の判明に一週間程度を要する場合もあります)。その結果によって、手術の必要性の判断などを行います。

 内視鏡的に切除できても、100%手術を回避できるという訳ではありません。顕微鏡の検査結果によっては、リンパ節転移の可能性が否定でいなという状況になる場合もあります。そのようなときには、手術による治療が後に必要になる場合もあります。詳しくは検査を受けた主治医の先生に伺ってください。

 下の写真は憩室(左の写真)と腫瘍(他の3枚の写真)です。

 憩室は粘膜面に存在する小さなポケットです。年齢とともに増加する方がいます。上行結腸、S状結腸に多くみられ、通常は治療の必要はありません。たまに炎症や、出血を起こし、治療が必要になる場合もあります。

 憩室の発生する頻度は個人差があり、特に、直径の大きな(内腔の広い)上行結腸に多発する分には大きな問題は無いのですが、内腔がもともと狭いS状結腸に多発すると、腸管の直径そのものがさらに小さくなり、大腸の内視鏡自体の挿入が物理的に困難になる場合もあります。ちなみに、高齢になると便が細くなる、という人がいますが、その原因が憩室によって生じている場合も多々あります。

 また、このポケットには便がはまり込んで、内視鏡前処置の大量に飲む下剤でも、洗い流せずに、内視鏡の挿入時にコロコロと出てきて視野の妨げになり、内視鏡挿入の支障の一因にもなります。ですから、憩室が多発している人は、@腸管自体が狭いということ、A便がキレイに除去できないこと、という2つの悪条件が重なって、内視鏡挿入の難易度が上がるのです。

 外科的手術の適応となるような腫瘍は、もともと内視鏡的治療が可能であったポリープが、「年」という時間をかけて成長し、内視鏡では切除できないほど大きさまで成長してしまった結果です。

 このような腫瘍が発見された場合には、その一部をつまんで細胞を採取(=生検)をします。生検は痛みはなく、当院でも行っております。このような大きな腫瘍の壁に便がこすれて、出血することで、便潜血が陽性になるのです。

 特に、右2枚のような状態で発見された腫瘍の内科的な内視鏡的治療は、どんな消化器内視鏡治療の名医でも不可能です(外科医によって行われる、腹部に数本の管を入れて手術をする「腹腔鏡」の治療の事ではありません)。

 右2枚の腫瘍は、内視鏡的治療の適応がないので、これらの腫瘍に内科医が内視鏡で「手」を出す事は禁忌です。速やかに、消化器外科の先生に紹介してもらう必要があります。セカンドオピニオンを求めて、内視鏡治療ができる病院を探している場合ではありません。

@憩室 A小さな腫瘍 B大きな腫瘍 C大きな腫瘍
 @憩室は放置。A腫瘍は生検します。BC粘液が血液によって薄赤く変色。→便潜血が陽性

 内科医による内視鏡での治療というのは、ここ数年特に発展が目覚ましく、数年前では、外科医による手術の適応になっていたものの一部が、内視鏡でも治療が可能になってきました。

 ここで注意が必要なのは、その発展は、徐々に全国の医療機関で進歩しているのは事実ですが、全ての病院で均等に起こっている訳ではないという事です。

 つまり、そこには、大腸内視鏡挿入技術と同じように、「医師個人の力量」が大きく関与しているのです。

 一見、「え!?」と思うかもしれませんが、当然と言えば当然です。

 医療のあらゆる分野において、「エキスパート、スーパードクター」と言われる人物が存在するのは、周知のとおりです。

 つまり、「内視鏡的治療ができる」と判断されるか、「外科的な治療(手術)の適応」と判断されるのかは、その病変を目の当たりにした、内視鏡を握る医師の個人的な知識、力量、技量の違いによって判断が食い違う可能性があるのです。

 もっとわかりやすく言うと、経験のある医師であればあるほど、内視鏡治療の範囲が広いという事です。しかし、その限度というものもあり、医師はその「限度」を理解していますので、BCのような腫瘍には決して内視鏡で手を出してはいけないのは当然です。専門的な話になりますが、Aのような腫瘍でも、超音波内視鏡を用いる事によって、適切な治療法が選ばれることになります。

 当院では、内科的治療か外科的治療か、迷うような症例に出会った場合は、内科的治療の経験が非常に豊富な、難易度の高い内視鏡治療(ESD)の経験を豊富に持っている、がん治療専門機関の消化器内科医を紹介しており、その先生に判断をして頂いておりますので、どのような病変が見つかっても、適切な医療機関を紹介しますので、安心して検査を受けて頂いて結構です。

 このように内視鏡でできることは日々広がってきました。しかし、限界もあります。良性、悪性を問わず、早期の発見、治療が必要なことは言うまでもありません。40歳を越えて、まだ一度の内視鏡検査を受けたことがないのであれば、症状の有無に関わらず、受けた方が良いに決まっています。がんになってしまった患者さん全ての方は、「まさか自分が・・・」、「自分とは無縁と思っていた」、「痔だとおもっていた」と、お約束のように言います。ぜひちょっとだけ勇気をだして、検査を受ける事を考えてみてください。

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