胃カメラを大腸に!?
 通常はあまり知られていないのですが、当然とい言ってしまえば当然なのですが、胃(上部消化管)用のカメラと、大腸(下部消化管)用のカメラは、もちろん別物です。当たり前ですよね、同じカメラを患者さんの肛門から入れた後に、次に別の患者様の口から挿入するのは、いくら専用の機械で入念に洗浄するとは言え、なかなか受け入れがたいものです。口から、肛門から、それぞれ分けられて使用されるのが当然の話です。

 そこで、あまり一般の方には知られていない、上部用(胃用)と下部用(大腸用)では何が違うのか、簡単に説明してみたいと思います。決定的に違うのは、「太さ」と「長さ」です。細かい仕様に関しては割愛しますが、大雑把に言うと、大腸用が「太くて長い」のです。

 胃カメラは近年、「口」からではなく、「鼻」から挿入する為に、従来の胃カメラよりもさらに細くなったものが登場しています。それは別として、通常の「口から挿入用」の胃カメラと比較して、大腸用は、「太くて長い」のです。

 まず「長さ」から解説します。
 大腸用は、基本的に「盲腸」(大腸の一番奥)まで到達しなければなりません。盲腸までの距離が長いので、大腸用は通常、1m30cmあります(上部用では胃の次にある十二指腸が目的地で、個人差も少なく、1mもあれば十分です)。しかし、大腸は上部と比べ、個人差があり、中にはとても長い腸の人がいます。そこで、「1m30cmでは届かない人用」のファイバーが存在します。いわゆる「ロングタイプ」で1m60cmあります。しかし、このロングタイプは、大きな医療機関でないと、なかなか常備されていません。小さな医療機関でこのファイバーが必要になった時は、過去の検査で「非常に長い腸の持ち主」と分かっている患者様の検査日に、わざわざ業者から借りて準備しておき、検査に臨むというスタイルをとっています。

 次に「太さ」です。最初に述べた、上部用で鼻から挿入するタイプのカメラが、消化管で用いる最も細いタイプで、直径約5mmです。通常の「口から挿入用」は約9mmです。そして大腸用は11〜13mmです(性能、機能によって差がある)。普通に考えて、細い方が楽なのは、容易に想像がつきますよね。当院で通常用いているカメラは11mmです。太いカメラは、高解像度で観察することができ、大きな医療機関でそのような必要がある場合に用いられます。

 さてここで考えてみてください。体重が100kgオーバーの、大きな男性と、高齢で腰の曲がった体重が40kg前後の女性。この2人に対して、一番細いといわれる約11mmのカメラを「大腸用だから」といって、同じように使用できるか?という問題です。

 できないから問題提起をしているのです。どう考えても、この女性に、11mmというのは相対的に太くなります。体を構成する全てのパーツが小さいのですから当然です。子供を想像すれば理解できますよね?小学生に対して大人の大腸用なんて、あり得ないくらい太いのです。

 また、高齢になると、「憩室症」といって、腸の壁に小さなポケットのようなクボミが出現し、もともと小柄で細い腸の直径が、さらに細くなったり、長い人生とともに、過去に腹部の手術の既往によって生じた「癒着」があったり、大腸がん術後による「吻合部(繋ぎ目)狭窄」や、直腸がん術後の「人工肛門の狭窄」等で、大腸用のカメラでは挿入が非常に困難になる方がいるのです。

 ここで登場するのが、タイトルにある「胃カメラを大腸に!?」なのです。大腸用のカメラでは、相対的に太すぎたり、憩室や癒着によって盲腸までの挿入が困難と思われた患者様には、上部用のカメラを使用します。当院では、胃の検査は全く行っておりませんので、このカメラを別の患者様の「口」から挿入するような事はもちろんありません

 ここで「胃カメラは短いから、大腸の一番奥までは届かないのでは?」と思った方は素晴らしいです。なかなか良い点に気づきましたね!大腸は1m50cmくらいあると、医学書や、さまざまな医療系のHPに載っています。ではなぜ1m30cmしかない大腸用カメラが盲腸にまで到達するのかというと、長い腸を手元の操作でうまく短縮しているからです。

 通常、大腸用のカメラが多くの場合、1mも入らずに盲腸まで到達するのは、そのようなカラクリがあるからなのです。ですから、操作次第で、もともと1mしかない胃用のカメラを盲腸にまで到達する事は可能です。しかし、やや難しい話になりますが、胃カメラは細い分、大腸の力に対する抵抗力が弱く、「力負け」しやすい傾向にあります。しかし、これをうまく短縮して、盲腸にまで到達するには、それなりの「技術と経験」が必要になります。

 今まで大腸用のカメラで盲腸までの挿入が不可能だったり、なかり苦痛を伴っていた患者様に対して、胃カメラを使用する事により、「より楽な大腸内視鏡検査を提供」できるものと思っております。

 【最後に、お願いがあります】

 過去の検査で非常に大変だったので、最初から「胃カメラ用で」という事は原則できません。
 大腸用でどれだけ挿入困難なのか、まず、調べさせて下さい。
 「胃カメラなら入る可能性がある」と判断した患者様に限り使用します(入らない理由は様々ありますので)。
 「当院で前回胃カメラでやった」、「次回は胃カメラでやった方がよい」と言われた方には、最初から胃カメラを使用します。

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