治 療 法
  「手術せずに痔を治せませんか?」「痔の手術は痛いから、手術をしないで薬で治したい」、または、「注射で治したい」、と考えている人は多くいらっしゃいます。

 来院される患者さん全てに手術を勧めるわけではありません。症状の軽い人は、薬で経過を観察します。ですが、それだけでは、どうしても症状が治まらないという方には、手術や注射療法など、適切な治療を行うことになります。

 「痔」は、「がん」と違って、悪性の病気でありません。ですから、その手術の適応とは、痔によって、「どれだけ日常生活に支障を来たしているか」です。さらに「治療薬などで改善が見込めない」「本人に治療する気がある」という条件が揃えば手術の適応となります。

 当然の話ですが、日常生活に支障を来たしていなければ、手術なんてサラサラ考えないでしょうし、仮に支障を来たしていても、本人に手術を受ける気が無ければ、手術の適応から除外されます。

 「支障を来たさないレベル」にまで、薬で誘導できれば、もちろん手術の必要はありませんが、薬を何ヶ月も使用しても、症状が改善しなければ、徐々に手術を受ける気持ちが強くなり、あるラインを超えた時点で手術の適応になります。

 その「ライン」とは、個々の患者様が思うものであって、誰にでも共通した「このライン」というものは存在しません。

 例えば、がんのように「悪性」の病気であれば、日常生活に全く支障を来たしていなくても、手術の適応になるのは、ご理解いただけると思います。それが、悪性疾患と良性疾患の手術適応の大きな違いです。
痔核・脱肛の治療

【保存的治療


 症状が軽い場合は、手術をせずに外来通院にて薬(坐薬・軟膏・内服薬)で治療を行ないます。初診の方の約6割は薬で治ります。


【単純切除法(電気メス・レーザーメス使用)】

 内痔核、外痔核、裂肛、肛門ポリープなど、1〜2ヶ所の小さな脱出の場合にその部分を切除する方法です。多くの場合、入院期間は1泊2日です。症例にもよりますが、妊娠中の女性や高齢者でも手術が可能です。


【結紮切除術(電気メス・レーザーメス・ゴム輪結紮使用)】


 現在最も多く用いられている方法です。痔核の一部を切除し、その根部を輪ゴムで結紮して処理します。一ヶ所で軽症であれば、一泊二日の入院で可能です。

 しかし、痔核が多数に及ぶような脱肛では、処置が複数になるため、出血の危険性の増加や、痛みの程度の増加があるので、多少入院期間が長くなる場合もあります。 また、お住まいが遠方の場合にも、数日延長した入院をお勧めしております。


【四段階注射法(ALTA使用)】

 痔そのものに4個所に分けてALTA(ジオン)と呼ばれる特殊な薬剤を注射して痔に炎症を起こさせて、退縮、縮小させる治療する方法です。抗凝固剤などを服用している患者様にも、適応になります。

 痔そのものを切除する訳ではないので、全国的な統計では、再発率が10〜15%と高いのが短所ですが、上の「結紮切除術」を数ヶ所に施してから、小さな痔に対してこの注射を注入する事によって、より両者の長所を生かした治療法を行う事もあります。

 また、術後に肛門周囲の違和感などを訴える場合もあります。

 最終的に、痔核・脱肛の治療は、その数、大きさ、患者様の年齢、合併症などによって、多岐にわたり、ミックスされて行われているのが現状です。

どの方法が一番良いのか?

 「一番はコレ!」というものは存在せず、個々の患者さん単位によって分けるのではなく、個々の痔核に対して、各治療法の長所・短所を熟知した医師の判断によって、各治療法の長所の点を生かした「良いとこ取り」した、個々の痔に対して治療法を臨機応変に変える事ができる、「術式(治療法)ミックス療法」がベストの治療法だと考えています。

 時に、患者様から「この方法でお願いします」と言う方もいらっしゃいますが、最善の治療法というのは、素人の患者様が簡単に判断できるものではありません。その点については、よく理解して頂ければ幸いです。

【補足】

【凍結法(冷凍メス使用)】


 当院では昭和48年に冷凍メスを導入しました。液化炭酸ガスを使用し、痔核などの患部を-31℃で凍結し、脱落させる方法ですが、術後の浮腫みが強く出るので、現在は殆ど行っておりません。
「痔の手術は痛いのですか?」

 「痛くない」と言えばうそになってしまいますが、複数の痔が組み合わさった脱肛などの手術で、複数の痔核を治療した場合と、一ヶ所だけの治療の場合では、もちろん後者の方が、痛みの程度は軽いのは当然です。

 また痔ろうの場合は、痔核、脱肛の術後と比べ、痛みを訴える方の数が少ないのは事実です。痔核、脱肛と違い、痔ろうの場合は、痔ろうが複数に存在する頻度は少ないので、単純に「傷の数が少ない」ということで、痛みを訴える患者様が少ないのだと解釈しています。

 現在では種々の鎮痛剤があり、以前よりは、痛みもそれほど強く感じなくなっています。手術後は翌々日から入浴が可能になり、下半身を暖めることにより、術後の痛みも軽くなります。徐々に痛みは軽減します。個人差はありますが、完全に痛みが消えるのは、1〜2ヶ月かかると思って下さい。

「手術時間や入院期間はどれくらいでしょうか?」

 手術時間は約5〜10分間です。入院期間は軽症の痔核や裂肛では1泊2日、脱肛(複数の痔核)や痔瘻では、程度にもよりますが約4〜5日間くらいの入院期間をお願いしております。


 肛門の手術は、腰椎麻酔と局所麻酔がありますが、当院では局所麻酔のみでしか手術を行っておりません。つまり、局所麻酔だけで対処できる範囲の患者様に絞って手術を行っております。

 局所麻酔の利点は最も体への負担が少なく、安全で合併症の少ない点が挙げられますが、大きな脱肛や、深い、複雑な痔瘻の場合は、局所麻酔では根治が望めない場合もありますので、そのような場合は、きちっと治療ができる、腰椎麻酔が可能な病院を紹介しております。その紹介先などは、「病診連携について」に一覧がありますので、是非ご覧下さい。

 当院では昭和43年の開業以来、手術件数は65,000例を超え、現在、一年に約1,300例の手術を行っております。ごく軽ければ、日帰りも可能ですが、自宅が遠方であった場合は、安全第一のために、1泊2日の入院をお願いしております。

 痔と言っても、症状が軽ければ薬で治ることが多く、たとえ手術をしても、大きな痔でなければ入院期間も短くて済みます。尚、入院期間は1日だけでも、傷が治るには1ヶ月ぐらいかかりますから、術後の出血の危険性を考えると、仕事などは一週間前後は無理をしないことをお勧めしています。

 どこの医療機関で手術を受けても、たとえ簡単な手術でも危険は伴います。その要因となるものは、注射、特に麻酔によるショック、薬の副作用、アレルギー反応、持病の増悪などが挙げられます。

 持病があり、抗凝固剤などを常用されていて、手術に支障を与えると考えられる場合には主治医に手術が可能かどうか許可を得る必要があります。

 また、術前検査で何も異常がなくとも手術中に事故が起こらないとは限りません。特に高齢者の方、耳の不自由な方、体の不自由な方、病弱な方、また未成年の方の場合は手術前に家族の同意が必要です。

 手術に対する注意事項などをお話しますが、その時に患者さん本人だけでなく家族の方も一緒に話を聞いていただきたいのです。また手術当日の午後5時頃から手術後の説明があります。

 その際も前述のように健康に不安のある方は、家族の方の同席が必要です。手術には最善を尽くしたいと思いますのでご協力の程宜しく御願い致します。